アルトの決定は、すぐにバルトロメオに伝えられた。アウレリアが物資の買い取りを承諾したと聞かされた彼は、その場で崩れるように膝をつき、威厳も忘れ、男泣きに泣いた。それは、滅びゆく故郷を救う光を見出した男の、心からの涙だった。
こうして、アウレリアとグラン・メトロポリスの間で、歴史的な契約が結ばれた。それは、単なる売買契約ではなかった。一方が金を供給し、もう一方が物資を供給することで、互いの経済を再生させるという、共存共栄のための盟約だった。
数日後、アウレリアの港の光景は一変した。グラン・メトロポリスから、巨大な船団が次々と到着し始めたのだ。船倉からは、小麦の詰まった麻袋、色とりどりの織物の反物、鈍い光を放つ鉄の延べ棒、そして、あらゆる種類の工具や保存食が、まるで尽きることのない川のように陸揚げされていく。 それと引き換えに、アウレリアの大工房から運び出された金貨の箱が、彼らの船に積み込まれていった。金は、死に瀕した大都市の血管へと流れ込む血液となり、物資は、アウレリアの未来を築くための血肉となるのだ。
街は、かつてない活気に満ち溢れていた。アルトの計画通り、グラン・メトロポリスから招かれた技術者たちの指導のもと、街の郊外で巨大な地下備蓄庫の建設が始まった。アウレリアの住民たちも、ただ金を拾い集めるだけの毎日から解放され、建設作業や物資の仕分け、管理といった新しい仕事に生き生きと従事している。彼らの顔には、これまでなかった充実感が浮かんでいた。
アルトは、街を見下ろす丘の上に立ち、その光景を眺めていた。港では船団が行き交い、街には槌音が高らかに響き渡る。住民たちには潤沢な食料と衣類が配給され、子供たちの笑い声が以前よりも明るく聞こえた。 大地から湧き出る黄金は、相変わらずそこにあった。しかし、街の豊かさの源泉は、もはやそれだけではなかった。人々の労働、知恵、そして協力。それらが生み出す活気こそが、街の新たな富となっていた。
ふと、アルトの隣に、補佐官のリオが寄り添った。 「街が、生まれ変わっていきますね。アルト様」 「ああ」とアルトは頷く。「我々は、本当の豊かさの意味を、ようやく学び始めたのかもしれない」 本当の豊かさとは、無限の金を所有することではない。その価値を理解し、それを人々の幸福のためにどう使うかという知恵を持つことだ。金は手段であって、目的ではない。この街に湧き出る奇跡は、そのことを教えるためにあったのかもしれない。
東の空が白み始め、朝陽がアウレリアの街並みを黄金色に染め上げていく。それは、いつもの黄金の輝きとは違う、希望に満ちた、新しい時代の夜明けの光だった。アルトは、その光景を胸に焼き付けながら、確信した。アウレリアは、単なる黄金郷から、真の豊かさを備えた理想郷へと、今まさに生まれ変わろうとしているのだと。