黄金郷アウレリア第二章

飽和した市場の嘆願

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使節団を迎え入れたアウレリアの中央広間は、緊張した空気に包まれていた。大理石の床に金の象嵌が施された豪華な広間も、今はどこか色褪せて見える。アルトは街長の席に座り、正面に立つ使節団長と向き合っていた。

使節団長、バルトロメオと名乗る男は、壮年の、威厳に満ちた人物だった。しかし、その目には深い疲労の色が浮かび、手入れの行き届いた髭の下の口元は、固く結ばれている。 「若き街長殿。この度の突然の訪問、非礼をお許しいただきたい。我々は、一刻の猶予もない事態に直面し、藁にもすがる思いでこのアウレリアを訪れたのです」 バルトロメオの声は、低く、重々しく響いた。

「バルトロメオ殿。貴殿ほどの御方が、それほどまでに思い詰めた表情をなさるとは、グラン・メトロポリスに何が起きたのですか」 アルトは努めて冷静に問いかける。

バルトロメオは一度目を伏せ、苦渋に満ちた表情で語り始めた。 「不況です。…しかし、歴史上のいかなる不況とも違う。我々の街は今、豊かさによって滅びようとしているのです」 「豊かさによって…?」 アルトの問いに、バルトロメオは力なく頷いた。

彼の話は、にわかには信じがたいものだった。ここ数年、グラン・メトロポリスでは農業技術と工業生産が飛躍的に進歩した。天候にも恵まれ、畑には有り余るほどの穀物が実り、工房ではかつてないほどの製品が生み出された。街は物で溢れかえった。誰もが豊かになれるはずだった。 しかし、現実は違った。

「物が溢れすぎたのです」とバルトロメオは言う。「市場にはパンが山と積まれ、倉庫には織物が天井まで積み上がり、港には鉄の延べ棒が野晒しにされている。しかし、誰も買わない。…いや、買えないのです」 供給が需要を遥かに上回り、あらゆるものの価格が暴落した。パン屋は、パンを売っても小麦粉代にもならず、泣く泣く焼きたてのパンを川に捨てている。農夫は、収穫すればするほど赤字になるため、実ったままの畑を燃やした。職人たちは工房を閉鎖し、労働者たちは職を失った。

「街には物があるのに、人々は飢えている。着るものがあるのに、寒さに震えている。まさに悪夢です。通貨は循環せず、経済は完全に死んでしまった。人々は、価値を失った製品の山の上で、ただ無気力に座り込んでいるのです」 その光景を思い出したのか、バルトロメオはぐっと拳を握りしめた。

「我々に必要なのは、購買力。市場に凍り付いている富を、再び動かすための起爆剤です。そこで…我々は貴殿の街、アウレリアに最後の望みを託すことに決めたのです」 彼は深々と頭を下げた。その堂々たる体躯が小さく見えるほどの、必死の懇願だった。 「街長殿。どうか、我々の製品と作物を買い取っていただきたい。貴殿の街に無限に湧き出るその黄金で。穀物を、織物を、鉄を、我々が持つありとあらゆるものを。どうか、金で買い上げてほしいのです」

広間は水を打ったように静まり返った。アルトの背後に控える長老たちが、息を呑むのが聞こえる。 金を売って物を買う。それがアウレリアの摂理だった。だが、彼らが今求めているのは、その真逆の行為。用途も定かではない大量の物資を、街の生命線である金と交換しろというのだ。 アウレリアには、それほどの物資を保管する巨大な倉庫もなければ、消費しきるだけの人口もいない。ただ無用の長物として、アウレリアの土地に積み上がることになるだろう。

しかし、アルトはバルトロメオの絶望に満ちた目から視線を外すことができなかった。グラン・メトロポリスが崩壊すれば、アウレリアの金を買ってくれる最大の顧客を失うことになる。それは、アウレリアの緩やかな死を意味する。 これは、単なる隣人の問題ではない。アウレリア自身の生存がかかった問題なのだ。 「…お話は分かりました。しかし、これは私一人の判断で決められることではありません。街の議会で諮る時間をいただきたい」 アルトは、重い決断を迫られていることを自覚しながら、そう答えるのが精一杯だった。

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